借地権がついた底地を地主に返す時は原状回復義務に注意

もし祖父から代々引き継いだ旧法により借地権が設定された借地があり、底地の上の建物を今後も使用しないのなら、地主に借りた土地を返還することになるでしょう。この時、建物は撤去した上で戻す原状回復する義務を遂行することとなります。
しかしそのまま住み続けたい場合、契約期間満了後に更新を申し出たものの、地主から断られてしまったとします。
このような場合でも、借地人は建物を撤去して返還する原状回復義務を負うのでしょうか。
借地人が負う原状回復義務
賃貸借契約が終了すると地主の底地を原状回復させた上で返還する義務を負っているので、建物は取り壊すことが必要です。
これは民法598条にも「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。」と記載されていますので、建物の撤去にかかる費用は借地人が負担することになります。
しかし、この規定は民法上のものであり、借地には特別法として制定されている借地借家法の規定が適用されます。
借地借家法13条では「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」とあるため、建物買取請求権を主張することが可能とわかります。
建物買取請求権は地主の承諾有無には関係なく主張可能となりますので、建物を時価で買い取ってもらうことができれば撤去費用はかかりません。
建物買取請求権を行使できる時とは?
この建物買取請求権は、借地権の存続期間が満了し、契約更新がない場合に有効であるため、どのようなケースでも主張できるわけではありません。
仮に地主は契約の更新をしてもよいといっているのに借地人が契約を終了させたいという場合、建物買取請求権を行使することは難しくなる可能性があります。
建物買取請求権が認められるのは、借地人が更新を請求したものの地主が拒絶し、その理由に正当の事由があると認められるケースです。
このようなケースでは、借地人は更新請求権ではなく建物買取請求権を行使することが可能とされます。
しかし地主ではなく借地人の事情で更新せず、賃貸借契約を終了させるのなら「合意解約」で賃貸借契約を終了させることとなり、建物買取請求権は主張できないと考えられるでしょう。
単に撤去費用を抑えたい場合は?
借地権の期間が満了に至っていない場合には、建物撤去にかかる費用、そして満了までに発生する地代と建物買取請求権行使により受け取る金額、この両者を比較してどちらがよいか考えてみましょう。
ただ、原則としては借地人が解体費用を負担することとなりますが、地主が負担というケースも中にはあります。
都心部などは地価が高いので、売却可能となることが見込まれる場合などは地主が撤去にかかる費用を負担するといったこともめずらしくありません。