物納制度

相続税を金銭で支払うことができない場合に、金銭以外のもので収める方法です。

物納制度を利用する場合には、以下の要件を全て充たしていなければなりません。

① 相続により取得した財産(遺産分割での代償財産や、相続財産の収容による代替財産を含む)で、
日本国内の財産であること。

② 金銭による納付が困難で、延納によっても金銭納付が難しい理由があること。

※延納とは、長期(5年~20年)の分割払いのことで、利子税が付けられます。

③ 相続税申告期限内に納税者が物納申請し、遺産分割された財産であること。

④ 国が管轄処分するのに適した財産であること。

申告期限時には適した財産でなくても、国が収納するまでに条件が整えば物納が可能となります。



物納できる財産には、種類と順番が決まっています。

第一順位 国債、地方債、不動産、船舶

第二順位 社債、株式、証券投資信託、貸付信託の受益権

第三順位 動産


第一順位の土地があるのに、第二順位の株式を物納することは認められていません。

そして、同じ不動産ならば地型、形状、接道状況等、良い土地、悪い土地という区別はありません。
しかし、不動産を物納する場合には上記の④の要件を充たす必要があります。

この条件を充たせない不動産の場合、他の不動産への変更を指導されます。

不動産での物納不適格な条件は以下のようなものがあげられます。

① 質権・抵当権などの、担保の目的となっている財産。

② 所有権の帰属などについて、係争中の財産。

③ 共有財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合は除かれます)

④ 売却の見込みのない財産。

⑤ 境界線が不明確で、隣接所有者から境界線に異議のない旨の了承を得られない土地。

⑥ 敷金・保証金などの債務がある貸地・貸家。

⑦ 今後数年間以内の使用に耐えられないと認められる建物。

⑧ 借地、借家契約の円滑な継続が困難な不動産。

物納要件が整っていれば、貸している土地でも物納可能です。更地にする必要はありません。
生前の内に貸地を物納できるように、整備できれば納税財産となります。

納税対策は遺産分割対策と同じくらいに大切な対策です。そのためには生前での準備が欠かせないものとなります。

平成18年4月 物納制度改正

平成18年4月以降の相続には、改正された制度による物納申請が適用となります。

大まかな改正点としては、1、今までの物納手続きによる期間は曖昧なものでしたが、改正により厳格になりました。
2、そして、物納できる財産が明確になりました。

それでは、改正点につい整理してみましょう。

○期間に関する改正点○

■納税者側の改正点

今までは、物納申請書を納税期間までに提出すれば、物納申請は受け付けられました。
また、その他の書類の提出期限も特に定められていませんでした。
(遺産分割が終わっていなければその財産は物納申請できません)

時間を稼ぐことができたわけです。

従って、「とりあえず物納」という言葉がはやったりしました。

物納するかどうするかわからなくても、申請書さえ提出しておけば物納の選択肢を確保できたわけです。

しかし、改正後は物納申請に必要な書類を、申告期限までに提出しなければならなくなりました。

提出書類;測量図、境界確認書、登記事項証明書などなど。

書類の不備が指摘された場合には、20日以内に訂正しないと物納を取り下げたこととなります。

申請することによって、3ヶ月間期間を延長することができ、期間延長は最長で1年まで繰り返すことができます。
測量などは時間が非常にかかる場合がありますので、この期間延長を利用することとなります。

しかし、1年を過ぎると、いかなる理由があったとしても物納却下となります。例外は認められないこととなっています。

隣接地の所有者が海外へ旅行中などで、境界確認インの取得ができなくても認められないこととなります。

また、税務署による現地調査が行われます。税務署より補正事項(地中埋設物の撤去など)が出た場合には、
その時から1年以内に修正できないと物納却下となってしまいます。

■税務署側の改正点

今までの物納審査は、受理は税務署で審査は財務局が実施していました。

税務署に進捗状況を問い合わせしても、明確な回答は得られませんでした。
そして、審査期限も決められていませんでしたので、いつ終わるのかという目処は立たないものでした。

しかし、今後は審査も税務署が行うこととなります。

そして物納申請後3ヶ月以内には、許可か却下かを決定しなければならなくなりました。

物件数が多数の場合で、調査等に時間を要する場合には6ヶ月まで延長されることとなっています。
また、積雪などの特別な事情がある場合は9ヶ月まで延長することができますが、これが最長期間となります。

以上のように期間が厳格化したので、今までのような5~6年かかるということはなくなり、
どんなに時間がかかっても2~3年で結論が出ることとなりました。


○物納財産の明確化に関する改正点○

今までは、グレーゾーンのものがあり、文書により明確にされていませんでした。

しかし、改正により「物納不適格財産」「物納劣後財産」が明確に定められることとなりました。
物納劣後財産は物納適格財産が無い場合に限り、認められることとなります。

新聞報道等では、物納財産の範囲が広がったように記載されていましたが、
この劣後財産のことを指していて、物納適格財産が無い場合だけに求められるということです。


○その他の改正点○

■物納再申請

再申請は一度だけ可能となります。

物納が却下されてから、20日以内に申請しなければなりません。

注意しなければならないことは、書類が揃わないことによる却下や、
補正時効が整わなかったことにより却下された場合には、再申請は認められません。

再申請が認められるのは、物納申請財産が物納不適格財産であった場合に限られます。

物納不適格財産であったことを知らないで申請した人を救済する目的だからです。

■延納から物納への変更

延納から物納への変更はすることができます。

延納が厳しくなった方に適用できます。

申告期限から10年以内です。

物納収納価格は物納申請時の価格となります。相続時の価格ではありません。

■利子税の改正

従来物納許可がされると、許可されるまでの利子税はかかりませんでした。
しかし、改正により審査期間を除き、利子税が課せられることとなりました。


○改正による対策○

改正により、物納申請したとしても、却下されるリスクが常にあることを、認識しなければならなくなりました。
今までのような安易な考えではできなくなったことを理解する必要があります。

物納を検討する場合には、生前に物納条件を整備することが必須となります。

また、物納条件を充たしている財産は、相続税納付に際しては現金と同じといえます。

物納条件を充たす費用は、生前であれば不動産所得の経費となる場合もあります。

その費用分、相続財産も減り、相続税も減ることとなります。

物納財産の生前条件整備がキーワードとなります。