贈与税の配偶者控除

この「贈与税の配偶者控除」は相続、贈与を考えている方にも、そうでない方にも、
参考になると面白い内容なのでご紹介させていただきます。


この制度は婚姻期間が20年以上の配偶者に対して、評価額2000万円のマイホームを無税で
贈与できるというものです。

対象は、専ら居住の用に供する土地、借地権、または家屋で国内にあるものとなります。
そして翌年3月15日までそこに住み、その後もそこに住む予定のものです。

「そこに住み続けるつもり」ということが要件となってきます。
ですからすぐに売却するつもりなら特例適用とはなりません。

評価額2000万円の評価は、相続税評価により行われます。
その評価額のうち、持分で2000万円分に関して贈与するようにします。

贈与税基礎控除が毎年110万円認められていますので、
110万円を加えた2110万円までが無税の対象となります。

たとえば、評価額が6000万円の場合には、3分の1の贈与で2000万円となります。

この贈与に関する申告は、翌年の3月に行うこととなります。

私の場合も結婚して16年が過ぎ、現在17年目となっています。
マイホームの所有は100%私名義となっています。
マイホーム購入の際の自己資金、住宅ローン、全て私名義でのものだったからです。
あと3年もすればこの制度を利用して、妻に贈与できるわけです。

この制度を利用するメリットは、将来の相続税対策であるのかもしれませんが、
現実2000万円ぐらいの対策では大したことではありません。

相続は全ての人に起こることですが、実際に相続税を支払う人は5%の方とも言われています。

そう考えてみると、この制度を利用してマイホームの2000万円分を贈与するということは、
夫から妻への20年間の感謝の気持ちなのかもしれません。

実際に名義の一部が妻名義になったとしても、そこに住み続けていくならば
何も変わることはないからです。
この贈与は信頼の証であったりするかもしれませんね。
「これからの人生もよろしく頼みます」という気持ちなのかもしれません。

この配偶者控除を利用した贈与が威力を発揮するのは、実はその後のマイホームの売却の時なのです。

なにも配偶者贈与をしないで、つまり夫単独所有のままでの売却の場合で、譲渡益が5000万円あったとします。

居住用財産の売却なので、3000万円の特別控除が使えます。
5000万円-3000万円=2000万円 控除後の譲渡益2000万円が課税対象となってきます。
5年を超えて所有していた場合ならば、税率20%で税額400万円となります。
10年を超えて所有していた居住用ならば、特別控除後譲渡益6000万円部分は、
税率が20%から14%になり税額は280万円となります。
しかし、配偶者贈与により夫婦で持分を各々50%としていたとすれば、
それぞれの売却利益は2500万円となります。
夫婦それぞれが、3000万円特別控除を利用することができますので、贈与税はゼロになってしまいます。

この場合、贈与を受けた妻の税務上の取得費や所有期間に関しては、
贈与者である夫の数字を引き継ぎ計算することとなります。

ちょっと確認しておかなければいけないのは、「そこに住み続けるるつもり」という配偶者贈与の
要件の範囲だと思います。
明確に何年以上という規定があるのかは今後確認したいと思います。

さらに、この配偶者控除が威力を発揮するケースがあります。

それは評価額と時価のギャップが大きい不動産の贈与の場合です。

例えば、都心のタワーマンションです。
時価に比べて評価額は半分以下、3分の1以下のものも多くあるようです。
夫が購入した8000万円のマンションの評価額が4000万円だったとします。
購入後しばらくして、持分2分の1の評価額2000万円について妻へ配偶者贈与したとします。
さらにずっと後にそのマンションを8000万円で売却しました。
譲渡益はありませんので課税もありません。
ただし、売却代金の半分の4000万円は妻のものとなります。

もし、マンションが1億3000万円で売れた場合には、譲渡益が5000万円となります。
夫婦それぞれ譲渡益が2500万円ということになりますが、3000万円特別控除によって
課税はゼロとなるのです。

「評価額2000万円のマイホーム贈与」ではなく、「マイホーム取得資金2000万円の贈与」
という方法も認められます。

しかし、妻が受贈資金2000万円を投入するので、当初から夫婦共有となります。
購入代金が8000万円で妻の投入資金が2000万円の場合には、持分は4分の1となってしまいます。
一方、夫が単独で購入し、しばらく後に「評価額2000万円のマイホーム贈与」ならば、
妻の持分は2分の1(前例の計算によります)にすることができるのです。

同じ制度の利用でも、順番によって大きく差が出ることがわかります。

また、配偶者控除は家屋なし、つまりマイホーム土地だけでも可能です。
ただしわずかでも家屋持分をつけることがポイントとなります。
売却時の3000万円控除は家屋を所有していないと利用できないからです。

また、贈与時の不動産取得税は、家屋があれば居住用軽減措置が使えるようになり数十万円もの差となってきます。

現在は順調であっても事業リスクを負う経営者の方なら、万一のために配偶者贈与しておくことは
重要な事項と考えられます。

債務者が行う贈与は詐害行為等の微妙な問題があるようですが、無担保となっているマイホームを
妻名義にしておけば、万一破産などとなった時も自宅は妻名義で残すことができる可能性があります。
自宅が担保に入っていたり、妻が保証人となっていては不可能です。
また、債務超過の場合には注意や覚悟が必要となると思われます。

このように贈与税の配偶者控除は、利用の仕方を工夫すると(タイミングの問題だと思いますが)
大きなメリットがあるものなのです。



さて、「そこに住み続けるるつもり」という配偶者贈与の要件で、明確に何年以上住み続ければ良いという
規定があるのでしょうか?

これに関しては、基本的に「何年なら良い」という規定はないようです。

実際に考えられることは、贈与をした時には「そこに住み続けるつもり」だったとしても、
いろいろな事情によってその「つもり」が「つもり」ではなくなってしまうこともあるだろうということです。

要するに、贈与時では将来売却する予定がなかった。

しかし、その後に例えば事業に失敗したので売却しなければならなくなった、
という大義名分が必要であるということだと思われます。

ですから、ここの贈与と売却の順番には狂いがあってはならないのです。

まずは配偶者への贈与をします。

そのために贈与契約書を交わしておきます。

当然所有権の移転もします。

贈与を受けた配偶者は不動産取得税を支払います。

そして、売却しなければならない事情が発生しました。

売却の交渉を始めます。

売却の交渉の結果、売却が完了した。

また、売却の契約等は贈与年ではなく、次年以降の方が紛らわしくならないと思われます。

贈与の申告は贈与を受けた翌年の3月に申告をするわけですから、申告時に重ならないほうが紛らわしくないでしょう。

しかし、そのような手続きを実施したとしても、税務当局は「最初から売却するつもりで、贈与したのではないのか?」と
疑ってかかることもあると思われます。

そのためにも、時系列に一連の流れを説明できるような準備をしておくことが必要になります。

本当にそうならきちんと説明できますよね!

また、実際にはお任せになっている税理士さんに、税務署への説明をしっかりしてもらえば良いのだと思います。

物事には順番があります。ルールもあります。

そのことを良く理解して、実施していくことが大切です。

そして、良きアドバイザーを持つことが大切だと思います。